インスタグラムの最適な効果測定はユーザ行動観察調査

インスタグラムユーザの行動観察調査レポート第4弾は、「インスタグラムの効果測定のあり方」について考察します。

インスタグラムは3大SNSのひとつであり、多くの企業がその情報拡散力や影響力を期待してマーケティング施策に活用しています。しかし一方で、「インスタグラムは本当にCV(コンバージョン)に結びついているのだろうか?」と疑問に感じているマーケターの方もいるのではないでしょうか。

思うような結果が得られないのは、インスタグラムの効果測定を既存のアクセス解析データに頼っているからかもしれません。インスタグラムの使われ方が多様化するなか、どのようにユーザ行動を把握するべきか、ひとつの方向性をご提案します。

インスタグラムユーザのフォロー・閲覧行動や企業アカウントの課題については、過去記事(第1回レポート第2回レポート第3回レポート)をご参照ください。

インスタグラムは本当にCVにつながらない?

自社が運用しているインスタグラムのアカウントが「どのくらい購買行動を促しているか」は、どのマーケターも気になる点でしょう。

インスタグラムの購買貢献度の測り方について考えるにあたり、まずはECサイトへの流入数を確認しました。2018年度の国内ECモール・カートサービス・フリマアプリの流通総額Top10を、Similar Web(シミラーウェブ)で分析。4つのプラットフォーム(YouTube、Twitter、Facebook、Instagram)で調査を行ない、SNSの流入チャネルを比較しました。

その結果、インスタグラムからの流入数は、ほかのプラットフォームと比べて圧倒的に少ないことが判明しました。

国内の主要ECサイトを比較すると、傾向は一目瞭然です。各サイトへの流入経路の構成比はYouTubeとツイッターが大部分を占め、インスタグラムはZOZOTOWNを除く全サイトで最下位。楽天、Amazon、ヤフオクへの流入はほとんど見られませんでした。

この結果をふまえると「インスタグラムは購買に結びつかない」と諦めたくなるかもしれません。

ペイドメディアの解析手法でさえ不十分

しかし、Facebookが2017年に実施したアンケートでは、ペイドメディアでさえラストクリックアトリビューションモデルが限界を迎えていることを示す結果が出ています。

このアンケートは、Facebookが欧州5ヶ国で開催したイベント「Last Days of Last Click」で実施されたもの。実に77%のマーケターが、「ラストクリックアトリビューションモデルは、各ペイドメディアの間接効果を正確に測定できていない」と感じていました。

つまり現状では、コンバージョンまでに接触する各メディアの広告効果を、正確に測定できるモデルが存在しないことを示唆しています。

現状、ペイドメディアには様々な効果測定指標があります。そんなペイドメディアですら既存の解析方法では不十分なのですから、SNSの投稿が購買行動の起点になっているかは、なおさら測りにくいでしょう。

ユーザ行動の把握にはアナログな調査手法が必要

ECサイトへの流入が少ないとはいえ、今回のユーザ調査では「インスタグラムは商品の購買行動に影響を与える」という知見を得ています(第1回レポート)。

つまり、調査にアナログな手法を加えれば、これまであまり顕在化されていなかった新たな知見が得られるのです。

アナログ手法として、まず取り入れるべきなのはアンケート調査でしょう。日常的なユーザ行動に踏み込んだデータが集められますし、Webアンケートであれば対象者を集めやすく、定量的な分析も可能。また、購買プロセスのどの時点にインスタグラムが影響したかも聞くことができます。ある程度の回答数が得られれば、傾向もつかめます。

さらに深掘りをしたい場合は、ユーザ行動観察調査を追加しましょう。「行動観察+インタビュー」をセットで行なえば、インスタユーザ一人ひとりのリアルな挙動とインサイトが垣間見えます。

ここからは、アクセス解析には限界があり、ユーザ理解にはアナログな調査手法が適していることについて理由を述べていきます。

【理由1】ネット上だけで購買行動は完結されない

商品を認知・理解し、購買に至るまでのプロセスはネット上だけで完結するとは限りません。

企業は「投稿から商品を見つけ、ECサイトで購入する」というプロセスを模範的な購買行動と位置付けていますが、実際のユーザ行動は千差万別。アクセス解析では追えない行動も多いのです。

被験者にも企業の意図から外れた購買行動が散見されました。例えば、近所に販売店がある商品や、100均グッズやプチプラコスメなどの安価な商品は、実店舗で購入する傾向が見られました。また、店舗が遠い場合は、その近くに住む友達に購入してもらうケースも。

商品を認知したあと、「Google検索や口コミサイトで商品情報・評判を確認してから店舗で購入」するプロセスを経る被験者も複数いました。

実際の行動パターンから、ユーザは企業が理想とする購買行動をとるとは限らず、インスタグラムはおもに商品購買プロセスの初期段階に登場することが分かりました。

【理由2】購買に至るプロセスはシンプルではない

商品を購買するきっかけは「インスタグラムの投稿を見たから」とは限りません。インスタグラムの利用方法には個人差があり、被験者には「閲覧メインで投稿はほとんどしない」人もいれば、「何かを調べるときはGoogleではなくインスタグラムで検索する」人もいました。

インスタグラムのユーザは目的に応じて3つの検索機能を使い分けています。ですが、画像をフックにしているインスタグラムでは、基本的な商品特徴は得られるものの、販売店や価格などの詳細情報は得にくいです。

また、現状のハッシュタグ検索では複数タグを組み合わせられず、情報の深堀りがしにくい仕様。そのためユーザは、情報不足を補うためにGoogle検索で詳細情報にアクセスしているのです。

アクセス解析では、検索機能の使い分けや、インスタグラムの仕様がユーザ行動にどう影響しているかまでは追えません。

【理由3】インスタグラムで売れるかどうかは商品ジャンルによる

アンケートおよびユーザ行動観察調査では、インスタグラムとの親和性が高い商品・サービスについての知見も得られました。

インスタグラムと特に相性がいいのは「コスメ」「アパレル」「食品・飲料」の3ジャンル。おもな理由は「インスタ映え」しやすく、メイク方法やコーディネートなどのHow to情報を発信・受け取りやすいからです。

いずれも日常的に使用するものであり、家電やレジャー用品と比べて購入頻度が高く「日頃から関心度が高め」という点も、ユーザ行動を活性化させている要因となっています。

Instagram社の公表データ(※1)などを見れば、フォロワーが多い人気ジャンルを定量的に把握することはできます。ですが、「そのジャンルをフォローしている理由」や「ジャンル別のユーザ行動特性」までは分かりません。

多様化している生活者の購買行動を理解し、施策に活かすには「どのアカウントをフォローしたか」「どの投稿を閲覧したか」だけではなく、その行動に至った理由やインサイトにも目を向ける必要があります。

【理由4】「本アカ」と「裏アカ」を使い分けている

SNSユーザの「本音と建前」も、解析データには表れにくいポイントです。特に、見栄えが重視されるインスタグラムでは「本音」や「等身大の自分」をあまり発信しないため、投稿や閲覧行動を表面的に眺めただけではインサイトは見えてきません。

そんななか、増加しているのが「裏アカウント(裏アカ)」。表向きの自分を発信する本アカウントとは別に作成するサブアカウントのことです。インスタグラムの裏アカは「Fake(フェイク)」と「Instagram(インスタグラム)」を掛け合わせて「フィンスタグラム」と呼ばれています。

被験者にも「料理アカウント」と「友達専用アカウント」を使い分けている人がいました。料理アカウントは、自分が作った料理写真の投稿や情報収集に使用。料理が失敗したときは投稿しないとのことでした。一方、リアルな友達だけの裏アカウントには鍵を掛け、日常的な近況報告に気軽に使用していました。

ユーザ行動の背景には本音と建前があります。それによる行動パターンの違いは、定性的な調査手法でなければ把握しづらいでしょう。

【理由5】使用頻度が低い機能の課題が見えてくる

ユーザの実態調査すると、使用頻度が低い機能も確認できます。

今回は、動画投稿機能「IGTV」や「保存機能」がほとんど使われていないことが分かりましたませんでした。

IGTVは2018年6月に追加され、縦型フォーマットの動画を最長1時間投稿できます。被験者には通常投稿やストーリーズで短い動画を見る習慣があったものの、IGTVを見ている人はひとりもいませんでした。

現状、IGTVは動画の内容で検索できる仕様になっておらず、アカウント名での検索しかできません。ピンポイントかつスムーズに情報にアクセスしたいユーザにとって、見たい動画にすぐたどり着けないIGTVは、まだ閲覧行動に組み込まれていないようです。

また、気に入った投稿をブックマークしておける保存機能の使用頻度も低めでした。好きな画像や行きたい飲食店に関する投稿を保存している人もいましたが、あとで見返すことは「いいね」機能でも可能です。被験者も、使い慣れている「いいね」を保存機能の代わりに使用していました。

ユーザ行動は従来の解析ツールだけでは把握できない

調査から得られた知見を、インスタグラムの購買行動ファネルとしてまとめました。

インスタグラムの購買行動は、おもに以下の2パターンがあります。

・フィードやストーリーズの投稿からLP、ECサイトに飛び購入(衝動買いに近い)
・ハッシュタグや虫眼鏡で目的を持って検索し、購入する

多くの企業は前者のパターンを期待しますが、購買に至るまでのプロセスは多岐にわたり、ネット上で完結するとは限りません。インスタグラムで商品を知っても、最終的には「店舗で買う」「ECサイトで買う」「友人に購入を依頼する」など様々なパターンがあります。

また、インスタグラムに意思決定に必要な情報(商品情報や価格情報など)が足りない場合、GoogleやYahooで改めて検索する傾向があります。

インスタグラム経由のECサイト流入数は他のSNSと比べて少ないうえ、ネット外の購買行動はブラックボックス化しています。最終的に購買に至ったとしても、インスタグラムを経由したことを示すデータは残りません。

それでは「インスタグラムが購買プロセスのどこに効くか」が一向に不透明なままです。

インスタグラムが本当に購買貢献しているかを知るためには、ユーザ行動の目的や動機まで掘り下げることが不可欠です。効果検証をアクセス解析データに頼っていると、ユーザ像や施策の方向性を見誤りかねません。アンケートやインタビューによる行動観察調査を組み合わせれば、効果検証の精度が高まるでしょう。

次回は、調査の知見から得られた、インスタグラムマーケティングの効果を高めるテクニックをご報告する予定です。