インスタグラムの行動観察調査レポート第3弾。今回のテーマは「ユーザ行動のどこに商品訴求チャンスがあるか」です。
第1弾、第2弾でもお伝えした通り、インスタの企業アカウントはフォローされにくく、ユーザの購買意欲を直接的に喚起する存在になっていません。存在感を高める施策を打つには、ユーザの閲覧行動の傾向をつかむことが大切です。
今回、5名の被験者のインスタ閲覧行動を詳しく観察したところ、購買につながりやすい「ねらい目」が見えてきました。
調査結果 4つの閲覧機能とユーザの行動パターン
前提として、インスタグラムにおける典型的な行動パターンを確認しておきましょう。
閲覧機能は、「フォローアカウントを見る」「未フォローのアカウントを見る」に大別したうえで4パターンに分類できます。
フォローアカウントの投稿を見る場合
- ニュースフィード:投稿がリアルタイムで表示される(ホームボタン)
- ストーリーズ:フィードとは別にアップされる投稿。 24時間で自動的に削除される
未フォローのアカウントの投稿を見る場合
- おすすめ:虫眼鏡の検索窓をタップすると、おすすめのユーザが表示される
- 検索:人物やハッシュタグ、特定のお店・場所を入力して検索する
ストーリーズは2016年8月に追加された比較的新しい機能ですが、今ではインスタを毎日使う人の約7割(※1)が利用しているほど浸透しています。利用頻度の差はあるものの、今回の被験者は全員ストーリーズを閲覧していました。
被験者に観察された行動例
被験者に普段通りにインスタグラムを操作してもらったうえでインタビューを行なったところ、どの被験者も複数の閲覧機能を目的に応じて使い分けていました。
そこで、各被験者に見られた行動を4パターンに分け、おもな動機や特徴的な使い方を以下に整理しました。

さらにまた、以下の3つの傾向も見受けられました。
1. フィードとストーリーズは意識的に使い分けている
フォローアカウントの投稿画像や動画はニュースフィードでもストーリーズでも閲覧可能ですが、投稿は別々に行なえます。そのため、投稿者は「フィード用の投稿」と「ストーリーズ用の投稿」を意識的に分けて発信する傾向があります。
フィードは特別感のある投稿で統一したいユーザにとって、フィード用の投稿は「非日常のできごと」や「特別な思い出」を残すためのもの。例えば、「旅行先でのベストショット」や「友達のバースデーパーティーでの1枚」など、特別感のある投稿が多く見受けられます。
今回の被験者は「結婚報告の写真」「ツーリング先のきれいな風景」「特に気に入って買った食器セットの写真」などを投稿しているそうです。なかには、毎回時間をかけて写真を編集してから投稿するこだわり派の人も。
フィードには非日常的で“キラキラ感”のある写真が多いため、ご自身は年始の挨拶くらいしか投稿しない人や、一度も投稿経験がない人もいました。
一方、ストーリーズは「日常のできごと」を投稿する位置づけです。24時間で消去される仕組みなので「よく行くカフェでランチ」「飼っている猫の仕草」など、その日の何気ないワンシーンを切り取ったカジュアルな投稿が多く見られます。
被験者も気軽にストーリーズを利用していました。具体的には「あまり写りが良くない写真」「カフェで食べたもの」「その日に作った料理」など。24時間で消えてもいいと思える写真を投稿しているようです。
ストーリーズよりフィードの方が閲覧頻度・時間は高いこのように、同じ投稿でもフィード用とストーリーズ用には違いが見られます。使い分けによって、自分の投稿の世界観や統一感を保つメリットもあるようです。
では、閲覧行動はどうでしょうか。今回の被験者には、まずストーリーを見てから通常投稿に遷移する人もいれば、フォローアカウントの投稿をざっとチェックするのが習慣化している人も。「足跡がつくから」という理由でストーリーズを敬遠している人もいました。
初動や遷移の仕方は人それぞれですが、全体的に、ストーリーズより通常投稿のほうが閲覧頻度は高く、閲覧時間も長い傾向がありました。
2.「おすすめ」「検索」を使うユーザ意識の違い
未フォローのアカウントの投稿を閲覧できる「おすすめ」「検索」には、閲覧時の意識や目的に違いがあります。
<strong>「おすすめ」は暇つぶしに流し見する</strong>
「おすすめ」にはインスタグラムが独自基準で抽出したユーザが自動的に表示されるため、新たにフォローする人を探しているときに便利。ですが、おすすめユーザが自分の好みに合うとは限らないため、閲覧行動における優先順位はあまり高くありません。
被験者は、おすすめを「フィードやストーリーズに新規投稿がないとき」や「フォロー外のアカウントをチェックするとき」に利用していました。気になる投稿があれば、ハッシュタグをたどったりプロフィールを見たりして、フォローに至るケースも見受けられました。
3つの検索機能で目当ての情報に最短アクセスおすすめと違い、検索は目的がある場合に行なう閲覧行動。検索窓に人名や店舗名などを入力し、「知りたい情報」や「見たい画像」に効率的にアクセスする能動的なアクションです。
インスタでは以下の3つの方法で検索できます。
- ピープル(アカウント)
- タグ(ハッシュタグ)
- スポット(場所)
被験者は「友達と行くレストランの雰囲気や料理」「裾カラーのヘアスタイル」「友達に紹介された商品」「購入したいコスメの発色」などをチェックするために検索機能を使っていました。
検索は目的意識がはっきりしていますが、フィードやストーリーズと比べると利用頻度は低いです。
3. 「いいね」にも様々なパターンがある
SNSの基本機能とも言える「いいね」は、自分の好み・価値観に合うものや、感情が動かされたものを投稿した人に「共感」を伝える手段。インスタユーザにも定着していて、心理的な距離が近い人の投稿ほど「いいね」されやすい傾向があります。被験者も友達や知人の投稿にはこまめに反応していました。
ですが、被験者の行動を観察すると興味深い心理も垣間見えました。例えば、友達の投稿に対して「即“いいね”する場合と、ちゃんと見てからする場合がある」とか「本当にいいねと思わないと押さない」いう行動心理。友達だからといって、やみくもに「いいね」をするわけではなさそうです。
また、「好きなサッカーチームのなかで“いいね”が少ない選手がかわいそうだから」という理由で「いいね」をする人も。この場合は共感というより「応援・サポート」の意味合いが強そうです。
「いいね」には、文字通りの意味以外にも様々な意味が込められていることがうかがえます。
購買行動につながる2つのポイント
被験者の閲覧行動を踏まえると、商品への興味や購買を促しやすい2つのポイントが見えてきました。
1. 朝の閲覧タイムがねらい目
まず、着目したポイントは「時間帯」。
今回の行動観察調査では5人全員が「暇なときはとりあえずインスタを開く」ヘビーユーザー人でした。タイミングは「起きてすぐ」「昼休み」「寝る前」など人それぞれですが、特に目立ったのが朝の通勤電車での利用。時間は10〜15分程度で、メインは投稿ではなく閲覧です。
インスタグラムの公式サイト(※2)でも、女性は早朝の利用率が高いと報告されています。仕事や家事、育児に追われる日々において「ひとりになれる貴重な自分時間」をインスタ閲覧に充てているのでしょう。そのため、ユーザの情報接触率を高めるには朝の時間帯が狙い目です。
身近な人の投稿はじっくり読むただし、ユーザは画面をスクロールしながら短時間に多くの投稿をチェックするので、接触しやすい時間帯に投稿しても企業アカウントは埋もれてしまいます。
被験者も「親しい友達の投稿は全部読むけど、スルーする人もいる」「顔見知り程度の知人や宣伝は飛ばす」など、心理的な距離感によって「キャプションまで読むかどうか」が変わるとのこと。インスタには身近な人の近況を把握する役割もあるため、写真を見るだけではなく、行った場所や購入した商品名、それらに対する感想までじっくり読む傾向があります。
逆に言うと、効果的な時間帯に有用な情報を投稿しても、企業アカウントは写真のチラ見だけでスルーされやすいのです。
2. 検索を促すカギは「ハッシュタグ」
2つ目のポイントは「ハッシュタグ検索」です。
上述の通り、検索方法は目的別に3パターンありますが、被験者の行動で最も多かったのがタグ検索。ご紹介したインスタグラムの公式調査でも、日本のユーザの4人に1人は情報を探すときにハッシュタグを利用していると報告しています。
今回の被験者は、「♯秋コーデ」「♯ミニバッグ」といったファッション情報検索やタピオカの店舗チェックなどにハッシュタグを用いていました。また、「面白そうなハッシュタグはつい押しちゃう」というコメントも聞かれました。
そのため、企業アカウントを運用する際は、ハッシュタグ検索でヒットしやすいワードに絡めたコンテンツにすればユーザにアプローチしやすいでしょう。
なお、現時点では「#渋谷 #カフェ」のように複数のハッシュタグの指定はできず、この場合だと「#渋谷カフェ」とする必要があります。複数指定ができないと目的によっては検索しにくく、今回の被験者にもGoogle検索に流れるケースが見られました。タグ設定も分析のうえ慎重に行なうべきでしょう。
口コミを投稿したくなる仕組み作りを
被験者の行動観察から、以下の知見が得られました。
- 投稿者はフィードとストーリーズの投稿内容を区別している
- 女性は朝の通勤時間などのすき間時間にフィードとストーリーズをチェック
- 身近な人の投稿は内容もしっかり読むが、それ以外は流し見程度が多い
- 知りたい情報があるときはハッシュタグでピンポイントに検索する
そこから見えてきた、企業アカウント運用の効果を高めるポイントは以下の通りです。
- 利用頻度の高い時間帯に投稿・広告配信する
- 一般ユーザに投稿してもらうほうがリーチしやすい
- タグ検索でヒットしやすい投稿を作成する
企業色を前面に出した投稿は敬遠されやすいので、一般ユーザの目に留まりやすく、能動的に口コミを投稿したくなる仕組み作りが必要です。
適切なハッシュタグ運用は、その解決策のひとつになり得ます。タグ別の投稿数などから需要を分析すれば、ユーザを惹きつけるハッシュタグ運用により口コミを促しやすくなるでしょう。
次回は、「既存のアクセス解析データだけでは測れないユーザ行動」についてご報告する予定です。