SNSの企業アカウントは友達の輪に入れない

前回のレポートでは、インスタユーザの購買行動において企業アカウントはあまり重視されておらず、フォローしている企業アカの数は少ないことをお伝えしました。企業がユーザと関係性を強化するには、「ユーザの身近なコミュニティ」にアプローチすることが有力な選択肢となります。

そこで今回のレポートでは、ユーザのフォロー行動やコミュニティ内の交流について観察した結果をご報告します。個々のユーザがインスタ内でどのようなアカウントをフォローし、どのようなコミュニケーションを取っているか理解することで、企業が取るべき対策の方向性を明確にします。

調査結果フォローしている企業アカウント数は少ない

前回お伝えしたアンケート調査では、インスタユーザがフォローしている企業アカウント数は非常に少ないことが判明しました(「5個以下」が72%、「0〜2個」が56%)。

購買の意思決定プロセスにおいては、7割以上の人がインスタグラムを参考にしています。
しかしながら、商品の販売元である企業アカウントがフォローされづらいというのは、 企業のインスタグラムマーケティングがあまり効いていない可能性を示唆しています。

インスタは日常的な交流ツール

インスタユーザに個別に実施した行動観察調査では、フォローしているアカウントは次の4つの属性に大別できます。

  • 友人・知人
  • 趣味
  • 有名人・ブランド
  • 企業

5名の被験者の方に共通しているのは、おもにフォローするアカウントは「個人」である点。インスタグラムはコミュニケーションツールですから、企業や組織より、個人アカウントをフォローするのはごく自然な行動と言えます。

実際、被験者の方がどのようなアカウントをフォローしているか見せてもらったところ、フォローアカウントの約5割は友人・知人など面識のある人でした。友人同士で相互フォローし、近況報告をし合うことが彼女たちのルーティンとなっています。

そのため、同じ「個人」でも、見ず知らずの趣味つながりの人や有名人より、面識があり心理的な距離が近い人のほうがフォローされやすい傾向があります。

企業アカウントは「ハロー効果」が効きにくい

また人間は、身近な人や憧れの人の言動に強い関心を示し、その人が使っている「モノ」や行なっている「コト」にポジティブな印象を持つ傾向があります。

これは、社会心理学では「ハロー効果」と呼ばれています。ハロー効果は、人やモノに何か1点でも優れた点・納得できる点があると、それ以外の点についてもすべて好意的に捉える現象のこと。商品を評価するとき、「あの人が使っているから間違いないだろう」と「人」というフィルターを介して判断した経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

インスタグラムにおいても「フォローしている人が使っている商品は魅力的に見える」というハロー効果が見られます。

その点、企業アカウントは友人・知人と比べるとユーザとの心理的な距離は遠く、基本的に気軽にフォローする対象ではありません。そのためハロー効果も効きにくく、購買行動にはあまり結びついていないことが今回の調査でも明らかになりました。

調査結果1閲覧行動はフォローアカウントの属性によって異なる

次に、被験者の方がフォローしているアカウントに対する行動を具体的に見ていきましょう。

フォローアカウントを「友人・知人」「趣味関連」「有名人・ブランド」「企業」の4つの属性に分け、ヒアリングした内容をまとめました。

次項からは、フォローアカウントに対する閲覧行動について、行動観察から見えてきたポイントをアカウントの属性ごとに見ていきます。

友人・知人をフォローする場合

友人・知人のアカウントをフォローするおもな理由は「近況確認」です。

先述の通り、人間は心理的な距離が近い人の言動に対する関心度が高く、「その人に関する情報はキャッチアップしておきたい」と考える傾向があります。被験者のフォローアカウントも約半数が面識のある人が占め、日頃からストーリー機能などで投稿をチェックしています。

また、友人・知人をフォローする理由には「良好な人間関係を保つため」という側面も。インスタでは、フォローしてくれた人をフォロバ(フォローバック)しないと相手にバレてしまうため、インスタユーザは「知り合いからフォローされたらフォロバ」が習慣化しています。

【閲覧行動】
友人・知人の投稿は、その他の投稿より丁寧に閲覧されています。普段、インスタは通勤時間や空き時間などに「暇つぶし」に利用され、ユーザは短時間で様々なアカウントの投稿をサッと流し読みしています。

被験者に普段通りにインスタを閲覧してもらうと、本人にとって心理的な距離が遠いアカウントはスルーされていました。しかし、身近な友人の投稿が流れてきたらスクロールする指を止め、内容をしっかり確認していましたし、「いいね」もこまめに押していました。

【購買行動への影響度=高い】
ほかのアカウントと比べ、友人・知人のアカウントが購買行動に影響する度合いは高いです。

被験者にも「今使っているバッグは友達がインスタで紹介していたもの」「友達の投稿を見て化粧品を買ったことがある」などの経験があり、身近な人の投稿が購買行動を後押ししている実態が垣間見えました。

趣味関連のアカウントをフォローする場合

趣味関連のアカウントをフォローする理由・目的は、「同じ価値観の共有」や「自己の趣味活動に対する承認欲求」からです。

今回の被験者には料理やバイクを趣味としている人がいて、趣味に関する情報収集だけではなく、自らも積極的に投稿していました。「色々な人からいいねやコメントがもらえるのがうれしい」とのことで、モチベーション高く取り組んでいます。

同じ価値観をもつ他者とつながりや、自分の発信に対してポジティブな反応が返ってくるコミュニティは、彼女たちの心理的な充足度を高める存在になっているようです。

【閲覧行動】
友人・知人ほどではないにせよ、趣味関連の投稿も割と丁寧に閲覧されています。趣味つながりの人(アカウント)に対しては面識がない場合でも親近感を抱きやすく、関心をもって投稿を閲覧する傾向が見られました。

実際、被験者にも「好きな漫画を描く人」や「個人デザイナー」など、自分が好きな世界観を表現しているアカウントをフォローする傾向が見られ、日頃からこまめに投稿をチェックしています。

【購買行動への影響度=中程度】
趣味関連のフォローアカウントは、商品を認知するきっかけになることがあります。趣味アカで気になる商品を見つけたら、ネット通販や店舗で購入するのが典型的なパターン。なかには、店舗が近い趣味つながりの友人に購入を依頼するケースもありました。

「趣味が同じ人=価値基準が近い人」なので、その人から商品を紹介されれば購買意欲は高まります。ただし、例えば料理関連のアカウントはHOW TO系の投稿が多いため、商品の購入につながるかどうかはジャンルにもよるでしょう。

有名人・ブランドをフォローする場合

芸能人やブランドをフォローする第一の理由は「ファン」だからです。

ファンになると「日常的に投稿・画像が見たい」「普段の生活ぶりが知りたい」という欲求が高まります。インスタグラムでフォローすると遠い存在だった有名人がより身近な存在になるため、被験者も好きな芸能人のアカウントをフォローしていました。

また、「インスタグラムでしか見られない」というレア感からフォローにつながるパターンも。被験者のなかには「応援しているサッカー選手の写真がネットに少ないから」という理由で、インスタのアカウントをフォローしているケースが見られました。

ブランドに関しては、ファンであることに加えて「トレンドにキャッチアップすること」もフォローの目的となっています。

インスタを介して憧れの有名人・ブランドをより身近に感じ、最新情報にキャッチアップしていることに満足感を得ているようです。

【閲覧行動】
フォローしている芸能人やインスタグラマーの投稿は、基本的にストーリーでざっとチェックし、気になる投稿があれば中身まで全部目を通すのが基本行動となっています。特に好きな有名人については、見逃しがないように随時対象者のアカウントに飛び、写真を全部チェックする行動も見受けられました。

ただし、「フォローしているけれど、芸能人の日常生活にはあまり興味はない」という被験者も。知人やインスタグラマーなど、芸能人より身近な人の投稿をしっかりチェックしているようです。

【購買行動への影響度=中程度】
好きな有名人の投稿に対しては関心をもって閲覧するものの、購買行動にはあまり結びついていません。

日本人には芸能・エンタメ情報を好む国民性があり、欧米人より芸能人・有名人の情報について「認知の欲求」が高い傾向があります。そのため、インスタでも目的や欲求が満たされれば、それ以上の行動を起こすことはほとんどありません。

また、女優やモデルに推奨されても、雰囲気や価格が自分にそぐわない場合は「いいね」を押すだけに留まっています。

企業をフォローする場合

企業アカウントをフォローするおもな理由は、「プレゼントキャンペーン」や「値引き・ポイントがもらえるから」。きっかけは広告やCM、店頭や芸能人による告知です。

ほかの属性のように「身近な人だから」「好きだから」といった好意的な心情からくる動機ではなく、「お得感」や「実利」がフォローの動機となっています。

なかには「好きな芸能人とコラボ企画をしていたから」飲料メーカーをフォローしたケースもありましたが、そのメーカーに対して特に思い入れはないとのこと。どの被験者も、メーカーや商品自体が好きで自分からフォローすることはないようです。

【閲覧行動】
心理的な距離が遠いため、ほかの属性より閲覧の優先順位は低いです。「いいね」をする頻度も低く、キャンペーン期間が終わればスルーされる傾向があります。

【購買行動への影響度=低い】
ユーザからのアクションが薄いため、必然的に購買行動にもほとんど結びついていません。

フォロワー数が多い企業アカは「ユーザのファン化」に成功

株式会社ユーザーローカルが提供しているの「Instagram人気ランキング(国内企業)」も参考に調査した結果において、フォロワー数が多いアカウントには2つパターンに分かれました。

  • インスタグラムとの親和性が高いコンテンツサービス(料理・メイク動画など)
  • 商品やサービスを提供している企業

前者は既存のWEBサイトやアプリの世界観を踏襲しているものが多く、もともとファンだった人がフォローしやすいコンテンツです。後者は季節によってラインナップやおすすめ商品が変わることがあるため、好きな企業の最新情報をウォッチするためにフォローしていることが推測されます。

フォロワー数上位の企業アカウントは印象的なコンテンツでユーザの「ファン化」や「エンゲージメント強化」に成功していますが、そのほとんどが既に認知度が高い大手企業。これからインスタマーケティングに取り組む新参企業が、商品PRやキャンペーンの情報発信だけでユーザにリーチし、フォロー数を増やそうとするのは難しいでしょう。

調査結果2ユーザの感情を動かす情報発信が有効

既にブランド力が高く、ある程度のファンが付いている商品であれば商品・キャンペーン情報の発信でも成立するかもしれません。

一方、ファン以外の人を「ファン化」するには通常のPR情報では刺さりません。お伝えしたように、インスタでユーザとの関係性を構築する大きなポイントは「心理的な距離の近さ」です。認知度が低く、ユーザとの心理的な距離が遠い企業が正攻法で商品の魅力やお得な情報を伝えても、スルーされるか短期的な関心を集めるだけで終わってしまうでしょう。

企業アカウントが「ユーザのファン化」のために与えるべきなのは、単なる実利ではなく「感情に訴えかける情報発信」です。ユーザと心理的な距離が近い人を介して情報を届けることで、拡散効果の向上が期待できます。

ヒントとなる事例

今回の行動観察調査では、ヒントとなる事例がありました。それは、ある海外のバイクメーカーが、素敵な画像(バイクやツーリング風景)を投稿している人に限定ステッカーをプレゼントするという施策。

ステッカーをもらった人は、驚きとともに「メーカーからステッカーが送られてきた!」と喜び勇んでインスタに投稿します。ユーザに驚きや喜びを与え、自然と「投稿したい」と思わせることで拡散力が高まり、投稿を見た人にも強い印象を残します。

インスタでは、このように感情に訴えかけて衝動的に拡散を促す施策が話題になりやすく、フォロワーを増やすきっかけになると考えられます。

ユーザの感情を動かすアプローチ・施策を模索すべき

要点をおさらいしましょう。

  • インスタグラムでは心理的距離の近いユーザがフォローされやすい
  • フォローアカウントの約5割は面識のある人。相互相互フォローして日常的に近況報告し合っている
  • 残りの約5割は、もともと好きな有名人やブランドのアカウント
  • キャンペーンを機にフォローされた企業アカウントは、キャンペーンが終わるとスルーされる

インスタでは、もともと認知していない企業をフォローする可能性は極めて低く、知っている企業でも一時的なキャンペーンでユーザの関心を惹きつけるには限界があります。

企業アカウントをフォローしてもらうには「心理的な距離を縮めるきっかけ作り」が必要で、それにはユーザの感情を動かすアプローチが効果的です。ビットエーでは、ご紹介した事例のような、驚きや喜びによって衝動的に拡散したくなるユーザ行動に着目。その行動を促す施策を「インパルスバズ」と名付けました。インパルスバズについては、別のレポートで解説する予定です。

今回は、インスタのフォロー行動を中心に見てきましたが、次回は典型的な行動パターンから、企業のアプローチ方法を探っていきます。