国内の月間アクティブアカウント数が3,300万を突破したインスタグラム(※1)。多くの企業は顧客接点におけるSNSの重要性を認識しており、顧客との新たな関係性構築のためにインスタグラムを活用しています。
その一方で、「インスタグラムが本当に購買につながっているのか」について、考察を深められる調査データは乏しいのが現状です。
果たして、企業のインスタグラムマーケティングはユーザの購買行動を促しているのか…。
その真偽を解明すべく、インスタグラムのメインユーザ層であり、購買活動が活発な20〜30代女性を対象にアンケート調査および行動観察調査を実施しました。定量・定性の両軸から得られた様々な知見を、今後、連載形式でご報告していきます。
今回は、調査レポートの第1弾で、実施したアンケートの結果をお伝えします。
調査概要20代〜30代女性のインスタグラムユーザを対象に定量・定性調査を実施
まずは、一連の調査の概要をお伝えします。
目的
インスタグラムが購買行動に与える影響を明らかにし、活用のベストプラクティスを考察する。
調査方法
インスタグラム利用者の利用実態および購買行動の調査として2種類の調査を実施
1) インターネットによるアンケート調査(定量調査)
2) ユーザ行動観察調査(定性調査)
対象者
都内または関東近郊に住む20〜30代女性のうち、インスタグラムを直近1ヶ月以内に利用した方
本記事では、アンケート調査によって得られた4つの知見をお伝えします。
調査結果1インスタは購買行動に影響を与えるが、購入後はシェアされづらい
では早速、マーケターやWEB担当者にとって気がかりな「インスタグラムが購買行動に与える影響」について見ていきましょう。
結論から言うと、インスタグラム利用者の約半数は、商品を購入するまでのプロセスにおいてインスタグラムが関与した経験がありました。具体的には、「インスタグラムで初めて知った商品を購入したことがある人」が55%、「購入前にインスタグラムで検索したことがある人」が46%。
インスタは商品認知・検索に利用され、購買行動に少なからず影響を与えていることを示しています。
インスタにおける商品認知・商品検索のパターン
なお、インスタにおける商品認知とは、以下のような場面で偶然商品を見つけることを指します。
例1)ホーム画面のニュースフィードに流れる投稿画像・動画を見たとき
例2 )虫眼鏡(エクスプローラー)タブで表示される投稿画像・動画を見たとき
ニュースフィードには、おもにフォローしている人や有名人・企業アカウントの投稿が表示され、エクスプローラータブではフォロー外の画像や動画が表示されます。流れてくる画像や動画を何気なく眺めていて、たまたま商品が目に止まる「受動的な」情報接触のパターンです。
一方、商品検索は目的をもって商品を探すこと。インスタにはおもに3つの検索機能があり、目当ての商品や人物、場所などにアクセスできます。
- ハッシュタグ:「♯」の後ろに任意のキーワードを付けたハッシュタグで検索
- ピープル:アカウント名やユーザ名を入力して検索
- スポット検索:駅や地名など特定の場所や位置情報が付与された投稿を検索
インスタや店頭、その他の媒体等で見聞きした商品について、インスタで改めて検索する「能動的な」情報接触のパターンです。
購入した商品をシェアする頻度は低い
また、商品購入後、インスタグラムでその商品を紹介する投稿をしたことがある人の割合は46%。約半数のユーザが購入した商品をインスタでシェアしています。購入者がインスタでシェアすると自動的にフォロワー等に拡散されるため、企業にとっては商品のPR効果の期待が高まる使い方です。
ただし、シェアの頻度を見ると期待感は少し下がるかもしれません。なぜなら、46人のシェア経験者のうち25人は1年以内にはシェアしておらず、「購入した商品をインスタで紹介すること」は日常的な使い方ではないからです。
調査結果2インスタグラムと相性がいい商品ジャンル=コスメ・アパレル・食品系
インスタグラムと商品ジャンルの親和性についても、興味深い結果が出ました。
「インスタで初めて知って、実際に購入した商品」および「購入前にインスタで検索したことがある商品」をジャンル別に聞いたところ、上位に挙がったのは「コスメ」「アパレル」「食品・飲料」の3ジャンル。コスメは認知・検索共にダントツの1位となりました。
アンケートの対象者が20〜30代女性という点は考慮に入れる必要があるものの、いずれも「インスタ映え」しやすいジャンルです。インスタユーザは「映え」に対する感度が高いため、見た目だけで「きれい」「かわいい」「おいしそう」と直感が働き、感性が刺激される商品は印象に残りやすい傾向があります。
視覚的に魅力が伝わる商品は、購買に結びつきやすい
また、上位3つの商品ジャンルは「視覚的な情報で商品の良し悪しを判断しやすい」という特性があります。
例えば、リップやアイシャドウが自分の肌色や好みに合うかどうかをテキスト情報だけで判断しするのは難しいですが、仕上がりやカラーバリエーションの画像、メイク動画があれば明確にイメージできます。
服や靴、バッグなどのアパレル商品も視覚情報が重要です。インスタにはコーディネート提案の投稿が多く、服やバッグが欲しい人は色味やサイズ感、コーデの雰囲気をインスタで確認する傾向があります。
食品・飲料も同様です。画像や動画であればひと目でシズル感を伝えられるので、お店の料理をインスタで見たことが予約につながる傾向も見受けられます。
逆に言えば、本やDVDのように外観を見ただけでは良さが伝わらない商品は、インスタでとの親和性は高くありません。
調査結果3購買意志決定に関わるアカウントは多岐わたる
次に、商品を購入する際に参考にするアカウントについて見ていきましょう。
前提として、商品購入時にインスタグラムの情報を参考にしたことがある人の割合は72%でした。7割以上の人が購買の意志決定プロセスにおいてインスタ情報を役立てていることがわかります。
そして、参考にしたアカウントを複数回答してもらったところ、「有名人(39%)」「企業(29%)」「自分と趣味が近い人(27%)」「知人(21%)」という結果に。多少のバラつきはあるものの、様々なアカウントが購買行動に役立てられていることがうかがえます。
これは、商品にまつわる情報源として、販売元である企業や影響力のある有名人の情報のみならず、身近な人や趣味が近い人の発信にも信頼を寄せている現れとも言えます。
なお、「知人」または「趣味が近い人」のいずれかに回答した人の割合は38%。親近感を感じている人のアカウントには、企業アカウント以上に購買促進の貢献度が高い可能性も示されました。
調査結果4フォローしている企業アカウント数は少ない
最後にお伝えするのは「インスタユーザがフォローしている企業アカウント数の少なさ」です。
前述の通り、インスタユーザは商品を購入する際に様々なアカウントを参考にしており、そのなかに企業アカウントも含まれます。それならば「企業アカウントのフォロー数もそれなりにあるのでは?」と期待が高まりそうですが、実際は「5個以下」が72%、「0〜2個」が56%という結果に。
つまり、商品の購入時に企業アカウントをチェックすることはあっても、多くの方はフォローするまでには至っていないのが現状です。
インスタグラムに企業アカウントを開設している国内企業は1万社以上とも言われています(※2)。どの企業も、顧客との新たな関係性構築や商品の認知度アップを期待してインスタを活用していますが、肝心のユーザ側のアクションは薄く、現状ではフォロワー数を増やすのは難しいでしょう。